gooブログから引っ越してきました
もとは漢検ブログ、今は主に古典和歌に関する話題を投稿しています
(旧ブログ名 「漢検一級 かけだしリピーターの四方山話」)

クラシック音楽や、放送大学大学院での学びの話題もときおり ^^

土佐日記

土佐日記 二月十六日(2)

(原文) 夜ふけてくれば、ところどころも見えず。京に入りたちてうれし。家にいたりて門に入るに、月あかければ、いとよくありさま見ゆ。聞きしよりもまして、いふかひなくぞこぼれ破れたる。家に預けたりつる人の心も、荒れたるなりけり。中垣こそあれ、ひ…

土佐日記 二月十六日(1)

いよいよ最終日の日記です。2回に分けてご紹介します。 (原文) 十六日。今日の夜さつかた、京へ上る。ついでに見れば、山崎の小櫃の絵も、曲の大鉤の像も、かはらざりけり。「売り人の心をぞ知らぬ」とぞ畏怖なる。 かくて京へ行くに、島坂にて人饗応した…

土佐日記 二月十五日

(原文) 十五日。今日、車ゐて来たり。船のむつかしさに、船より人の家に移る。この人の家、よろこべるやうにて、饗応したり。この主の、また饗応のよきを見るに、うたて思ほゆ。いろいろに返りごとす。家の人の出で入り、憎げならずゐややかなり。 (口語…

土佐日記 二月十二日、二月十三日、二月十四日

(原文) 十二日。山崎に泊れり。 十三日。なほ山崎に。 十四日。雨降る。今日、車京へとりにやる。 (口語訳) 十二日。山崎に泊まった。 十三日。引き続き山崎に。 十四日。雨が降った。今日、車を京に取りに行かせた。 「車京へとりにやる」 下船のとき(…

土佐日記 二月十日、二月十一日

(原文) 十日。さはることありて、上らず。 十一日。雨いささかに降りて、やみぬ。かくてさし上るに、東のかたに山の横ほれるを見て、人に問へば、八幡の宮といふ。これを聞きてよろこびて、人々拝み奉る。 山崎の橋見ゆ。うれしきことかぎりなし。ここに、…

土佐日記 二月九日(2)

(原文) かく上る人々のなかに、京より下りしときに、みな人、子どもなかりき、いたれりし国にてぞ子生める者ども、ありあへる。人みな、船のとまるところに、子を抱きつつおり乗りす。これを見て、むかしの子の母、悲しきにたへずして、 なかりしも ありつ…

土佐日記 二月九日(1)

(原文) 九日。心もとなさに、明けぬから、船を曳きつつ上れども、川の水なければ、ゐざりにのみぞゐざる。 この間に、曲の泊りの分れのところといふところあり。米、魚など乞へば行ひつ。 かくて、船曳き上るに、渚の院といふところを見つつ行く。その院、…

土佐日記 二月八日

(原文) 八日。なほ川上りになづみて、鳥飼の御牧といふほとりに泊る。今宵、船君例の病起りて、いたくなやむ。 ある人、あざらかなる物持て来たり。米して返りごとす。男どもひそかにいふなり。「飯粒してもつ釣る、とや」。かうやうのこと、ところどころ…

土佐日記 二月七日

(原文) 七日。今日、川尻に船入りたちて漕ぎ上るに、川の水ひて、なやみわづらふ。船の上ることいとかたし。かかる間に、船君の病者、もとよりこちごちしき人にて、かうやうのことさらに知らざりけり。かかれども、淡路専女の歌に賞でて、都誇りにもやあら…

土佐日記 二月五日(3)

(原文) かくいひて、ながめつつ来る間に、ゆくりなく風吹きて、漕げども漕げども、後へ退きに退きて、ほとほとしくうちはめつべし。楫取りのいはく、「この住吉の明神は例の神ぞかし。ほしき物ぞおはすらむ」とは、いまめくものか。さて「幣を奉りたまへ」…

土佐日記 二月五日(2)

(原文) いまし、かもめ群れゐて遊ぶところあり。京の近づくよろこびのあまりに、ある童のよめる歌、 祈りくる 風間と思ふを あやなくも かもめさへだに 波と見ゆらむ といひて行く間に、石津といふところの松原おもしろくて、近辺遠し。 また、住吉のわた…

土佐日記 二月五日(1)

(原文) 五日。今日、からくして和泉の灘より小津の泊りを追ふ。松原目もはるばるなり。これかれ苦しければ、よめる歌、 行けどなほ 行きやられぬは 妹が績む をづの浦なる 岸の松原 かくいひつつ来るほどに、「船とく漕げ。日のよきに」ともよほせば、楫取…

土佐日記 二月四日

(原文) 四日。楫取り「今日、風雲の気色はなはだ悪し」といひて、船出さずなりぬ。しかれども、ひねもすに波風立たず。この梶取りは、日もえはからぬかたゐなりけり。 この泊りの浜には、くさぐさのうるわしき貝、意思などおほかり。かかれば、ただむかし…

土佐日記 二月二日 二月三日

(原文) 二日。雨風やまず。日一日、夜もすがら、神仏を祈る。 三日。海のうへ昨日のやうなれば、船出ださず。風の吹くことやまねば、岸の波立ちかへる。これにつけてよめる歌、 緒をよりて かひなきものは 落ちつもる 涙の玉を ぬかぬなりけり かくて、今…

土佐日記 二月一日

(原文) 二月一日。朝のま、雨降る。午時ばかりに止みぬれば、和泉の灘といふところより出でて、漕ぎゆく。海のうへ、昨日のごとくに、風波見えず。黒崎の松原をへてゆく。ところの名は黒く、松の色は青く、磯の波は雪のごとくに、貝の色は蘇芳に、五色にい…

土佐日記 一月三十日

(原文) 三十日。雨風吹かず。「海賊は夜あるきせざなり」と聞きて、夜なかばかりに船を出だして、阿波の水門を渡る。夜なかなれば、西東も見えず。男女、からく神仏を祈りて、この水門を渡りぬ。寅卯の時ばかりに、沼島といふところをすぎて、多奈川といふ…

土佐日記 一月二十九日(2)

(原文) おもしろきところに船を寄せて、「ここやいどこ」ととひければ、「土佐の泊り」といひけり。むかし、土佐といひけるところに住みける女、この船にまじれりけり。そがいひけらく、「むかし、しばしありしところのなくひにぞあなる。あはれ」といいて…

土佐日記 一月二十九日(1)

(原文) 二十九日。船出だしてゆく。うらうらと照りて、漕ぎゆく。爪のいと長くなりたるを見て、日を数ふれば今日は子の日なれければ、切らず。正月なれば、京の子の日のこといひ出でて「小松もがな」といへど、海中なればかたしかし。ある女の書きて出だせ…

土佐日記 一月二十七日 一月二十八日

(原文) 二十七日。風吹き波荒ければ、船出ださず。これかれかしこく歎く。男たちの、心なぐさめに、漢詩に「日を望めば都遠し」などいふなることのさまを聞きて、ある女のよめる歌、 日をだにも 天雲近く 見るものを 都へと思ふ 道のはるけさ また、ある人…

土佐日記 一月二十六日

(原文) 二十六日。まことにやあらむ、「海賊追ふ」といへば、夜なかばかりより船を出だして漕ぎくる途に、手向けするところあり。楫取りして幣たいまつらするに、幣の東へ散れば、楫取りの申して奉ることは、「この幣の散るかたに、御船すみやかに漕がした…

土佐日記 一月二十五日

(原文) 二十五日。楫取りらの「北風悪し」といえば、船出ださず。「海賊追ひ来」といふこと、たえず聞こゆ。 (口語訳) 二十五日。船頭たちが「北風が吹いていて良くない」と言って、船は出航しない。「海賊が追いかけて来る」という声が、絶えず聞こえて…

土佐日記 一月二十三日 一月二十四日

(原文) 二十三日。日照りて曇りぬ。「このわたり、海賊のおそりあり」といへば、神仏を祈る。 二十四日。昨日のおなじところなり。 (口語訳) 二十三日。日が照って、その後曇りになった。「このあたりは、海賊に襲われる心配がある」というので、神仏に…

土佐日記 一月二十二日

(原文) 二十二日。夜べの泊りより、異泊りを追ひてゆく。はるかに山見ゆ。年九つばかりなる男の童、年よりは幼くぞある。この童、船を漕ぐままに、山も行くと見ゆるを見て、あやしきこと、歌をぞよめる。その歌、 漕ぎてゆく 船にて見れば あしひきの 山さ…

土佐日記 一月二十一日(2)

(原文) かくうたふを聞きつつ漕ぎくるに、黒鳥といふ鳥、岩のうへに集まり居り。その岩のもとに、波白くうち寄す。楫取りのいふやう、「黒鳥のもとに白き波を寄す」とぞいふ。このことば、なにとにはなけれども、ものいふやうにぞ聞こえたる。人のほどにあ…

土佐日記 一月二十一日(1)

(原文) 二十一日。卯の時ばかりに、船出だす。みな人々の船出づ。これを見れば、春の海に秋の木の葉しも散れるやうにぞありける。おぼろけの願によりてにやあらむ、風も吹かず、よき日出で来て、漕ぎゆく。この間に、つかはれむとて、つきて来る童あり。そ…

土佐日記 一月二十日(2)

(原文) かの国人聞き知るまじく思ほえたれども、ことの心を、男文字にさまを書きいだして、ここのことば伝へたる人に、いひ知らせければ、心をや聞きえたりけむ、いと思ひのほかになむ賞でける。唐土とこの国とは、言異なるものなれど、月の影はおなじこと…

土佐日記 一月二十日(1)

少し長いので、2回に分けてご紹介します。 (原文) 二十日。昨日のやうなれば、船出ださず。みな人々憂え歎く。苦しく心もとなければ、ただ日のへぬる数を、今日幾日、二十日、三十日と数ふれば、指もそこなはれぬべし。いとわびし。 夜はいも寝ず。二十日…

土佐日記 一月十九日

(原文) 十九日。日悪しければ、船出ださず。 (口語訳) 十九日。天候が悪いので、船は出航しない。 「日悪しければ」 天候が悪いと解しましたが、吉凶の話と見る説もあるようです。 ランキング参加中言葉を紡ぐ人たち ランキング参加中はてな文芸部 新潮…

土佐日記 一月十八日

(原文) 十八日。なほおなじところにあり。海荒ければ、船出ださず。この泊り、遠く見れども、近く見れども、いとおもしろし。かかれども、苦しければ、なにごとも思ほえず。男どちは、心やりにやあらむ、漢詩などいふべし。船も出ださでいたづらなれば、あ…

土佐日記 一月十七日

(原文) 十七日。くもれる雲なくなりて、暁月夜いともおもしろければ、船を出だして漕ぎゆく。この間に、雲のうへも海の底も、おなじごとくになむありける。むべも、むかしの男は、「棹は穿つ波のうへの月を。船は圧ふ海のうちの天を」とはいひけむ。聞きさ…