(原文)
八日。なほ川上りになづみて、鳥飼の御牧といふほとりに泊る。今宵、船君例の病起りて、いたくなやむ。
ある人、あざらかなる物持て来たり。米して返りごとす。男どもひそかにいふなり。「飯粒してもつ釣る、とや」。かうやうのこと、ところどころにあり。今日節忌みすれば、魚不用。
(口語訳)
八日。引き続き川を遡り、鳥飼の御牧というあたりに泊まる。今宵、船主のいつもの病が生じて、たいそう辛そうである。
ある人が、新鮮な魚を持ってきた。お米でお返しをする。男たちがひそかに言う、「世間では、飯粒でむつを釣るというではないか」と。このように、ものとものと交換するようなことが、他の場所でも時々あった。今日は斎日なので精進のため魚は使わない。
「鳥飼の御牧」
現在の大阪府摂津市鳥飼。御料牧場があった。
「例の病」
持病、ということと思われますが、ここまでの日記にこれに言及した箇所はありません。船酔いのこと、という解釈する向きもあるようです。
「あざらかなるもの」
漢字では「鮮らかなるもの」、つまり新鮮なものという意味ですね。あとに続く文章から、ここでは具体的には新鮮な魚であることがわかります。
「節忌」
「せちみ」。一月十四日にも出て来ましたが、毎月の斎日(さいにち。 8日、14日、15日、23日、29日、30日。)に精進潔斎することをいいます。
