2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧
たまかづら いまはたゆとや ふくかぜの おとにもひとの きこえざるらむ 玉かづら 今は絶ゆとや 吹く風の 音にも人の 聞こえざるらむ よみ人知らず もう私達の関係は絶えてしまったので、吹く風が目に見えないように、あの人の噂も耳に入って来ないのだろうか…
あかつきの しぎのはねがき ももはがき きみがこぬよは われぞかずかく 暁の 鴫の羽がき 百羽がき 君が来ぬ夜は われぞ数かく よみ人知らず 明け方には鴫が何度も何度も翼を羽ばたかせますが、あなたが来ない夜は、そういう夜が幾度あったか、私が数を数えま…
あひみねば こひこそまされ みなせがは なににふかめて おもひそめけぬ あひ見ねば 恋こそまされ 水無瀬川 何に深めて 思ひそめけむ よみ人知らず 逢わずにいるとなおさら恋心が募ります。地中を流れる水無瀬川のように、どうして深く思い始めてしまったので…
やましろの よどのわかごも かりにだに こぬひとたのむ われぞはかなき 山城の 淀の若菰 かりにだに 来ぬ人とたのむ われぞはかなき よみ人知らず 仮そめにさえ来てくれない人をあてにする私は、何とはかないことか。 「山城の 淀の若菰」が序詞として「狩り…
すまのあまの しおやきころも をさをあらみ まとほにあれや きみがきまさぬ 須磨の海人の 塩焼き衣 筬をあらみ 間遠にあれや 君がきまさぬ よみ人知らず 須磨の漁師が塩を焼くときに着る衣は、筬が粗くて目が詰まっていない。それと同じように、わたし達の思…
あきならで おくしらつゆは ねざめする わがたまくらの しづくなりけり 秋ならで おく白露は 寝覚めする わが手枕の しづくなりけり よみ人知らず 秋でもないのに置いている白露は、夜に目が覚めてしまう私の枕の雫なのです。 白露は涙を見立てたもの。「手…
あひにあひて ものおもふころの わがそでに やどるつきさへ ぬるるかおなる あひにあひて もの思ふころの わが袖に 宿る月さへ 濡るる顔なる 伊勢 逢瀬を重ねた頃を思い返し、もの思いにふけって流した涙に濡れた袖に映る月までもが、私と同じ涙顔になってい…
うきめのみ おひてながるる うらなれば かりにのみこそ あまはよるらめ うきめのみ 生ひて流るる 浦なれば かりにのみこそ あまは寄るらめ よみ人知らず 浮き海布ばかりが育って流れている浦に狩りに来る漁師のように、憂き目ばかり見ているわたしのところに…
はながたみ めならぶひとの あまたあれば わすられぬらむ かずならぬみは 花がたみ めならぶ人の あまたあれば 忘られぬらむ 数ならぬ身は よみ人知らず 見比べる相手がたくさんいるので、忘れられてしまったのでしょう。ものの数にも入らないわたしのような…
くももなく なぎたるあさの われなれや いとはれてのみ よをばへぬらむ 雲もなく なぎたる朝の われなれや いとはれてのみ 世をば経ぬらむ 紀友則 この身は、雲もなく凪いだ朝のようなものか。「いと晴れて」ならぬ、あの人に「厭はれて」世を過ごすのだろう…
みてもまた またもみまくの ほしければ なるるをひとは いとふべらなり 見てもまた またも見まくの ほしければ なるるを人は いとふべらなり よみ人知らず 逢えばまた逢いたくなるので、あの人は馴れ親しむのを嫌がっているのでしょう。 「見まく」は、用言…
ひさかたの あまつそらにも すまなくに ひとはよそにぞ おもふべらなる ひさかたの 天つ空にも 住まなくに 人はよそにぞ 思ふべらなる 在原元方 遠い空の上に住んでいるというわけでもないのに、あの人はわたしのことを、遠く隔たったところにいる者と思って…
わがごとく われをおもはむ ひともがな さてもやうきと よをこころみむ わがごとく われを思はむ 人もがな さてもやうきと 世をこころみむ 凡河内躬恒 わたしが思うのと同じようにわたしのことを思ってくれる人がいればいいのだけれど。それでもこの世が辛い…
よそにのみ きかましものを おとはがは わたるとなしに みなれそめけむ よそにのみ 聞かましものを 音羽川 渡るとなしに みなれそめけむ 藤原兼輔 あの人の噂を、自分とか関わりのないものとして聞いていれば良かったのに、渡ったこともない音羽川の水に慣れ…
はなすすき われこそしたに おもひしか ほにいでてひとに むすばれにけり 花薄 われこそ下に 思ひしか 穂に出でて人に 結ばれにけり 藤原仲平 心ひそかに思っていたのに、あの人は誰からもわかるように、他の人と結ばれてしまったことよ。 「花薄」は穂の出…
つきやあらぬ はるやむかしの はるならぬ わがみひとつは もとのみにして 月やあらぬ 春やむかしの 春ならぬ わが身一つは もとのみにして 在原業平 月はかつての月ではないのか。春は以前の春ではないのか。わが身だけはもとのままなのに。 相手の状況が変…
かたみこそ いまはあたなれ これなくは わするるときも あらましものを 形見こそ 今はあたなれ これなくは 忘るる時も あらましものを よみ人知らず 形見の品こそが今は恨めしいものになってしまった。これさえなければ、あの人のことを忘れられる時もあるだ…
あふまでの かたみとてこそ とどめけめ なみだにうかぶ もくづなりけり 逢ふまでの 形見とてこそ とどめけめ 涙にうかぶ もくづなりけり 藤原興風 また逢うときまでの形見として、あなたは裳を脱いで残していったのでしょう。でも私にとっては、その裳は悲し…
あふまでの かたみもわれは なにせむに みてもこころの なぐさまなくに 逢ふまでの 形見もわれは 何せむに 見ても心の なぐさまなくに よみ人知らず また逢える日までの形見といっても、私にとってそれが何になろうか。見ても心が慰められるわけでもないのに…
おほぞらは こひしきひとの かたみかは ものおもふごとに ながめらるらむ 大空は 恋しき人の 形見かは もの思ふごとに ながめらるらむ 酒井人真 大空は、恋しい人の形見なのだろうか。いや、そうではないのに、どうして物思いにふける度におのずと眺められて…
やまがつの かきほにはへる あをつづら ひとはくれども ことつてもなし 山がつの 垣ほにはへる 青つづら 人はくれども 言伝てもなし 寵 あの人は、私の住む里にやって来ることはあるのに、わたしへの言伝てすらも残してはくれない。 第三句までが「くれ(繰…
ふるさとに あらぬものから わがために ひとのこころの あれてみゆらむ ふるさとに あらぬものから わがために 人の心の あれて見ゆらむ 伊勢 あの人の心は古びた里でもないのに、どうして私には荒れ果てて離れていくように見えるのでしょう。 「ふるさと」…
あふさかの ゆふつけとりに あらばこそ きみがゆききを なくなくもみめ 逢坂の ゆふつけ鳥に あらばこそ 君が行き来を なくなくも見め 閑院 私が逢坂の関のゆふつけ鳥であったならば、あなたが都と近江を行き来するのを鳴きながら見ることができるでしょうに…
まてといはば ねてもゆかなむ しひてゆく こまのあしをれ まへのたなはし 待てと言はば 寝ても行かなむ しひて行く 駒の足折れ 前の棚橋 よみ人知らず 帰るのは待ってほしいと私が頼んだら、共寝をしてから帰って欲しいのに、それでも帰ってしまうあの人の馬…
たまほこの みちはつねにも まどはなむ ひとをとふとも われかとおもはむ 玉鉾の 道は常にも まどはなむ 人をとふとも われかと思はむ 藤原因香 愛しい相手のところに通う道々ではいつも迷ってほしいものです。他の人のところへ行くのだとしても、自分のとこ…
いまはとて かへすことのは ひろひおきて おのがものから かたみとやみむ 今はとて 返す言の葉 拾ひおきて おのがものから 形見とや見む 近院右大臣 今はもう縁が切れたと、あなたが返してくる手紙を拾い集めて、もともと自分が書いたものではありますが、そ…
たのめこし ことのはいまは かへしてむ わがみふるれば おきどころなし たのめこし 言の葉今は 返してむ わが身ふるれば おきどころなし 藤原因香 これまで私に期待をさせてきたあなたの手紙ですが、もうお返しします。年老いた私の身と同じく、あなたからの…
おもひいでて こひしきときは はつかりの なきてわたると ひとしるらめや 思い出でて 恋しき時は 初雁の なきてわたると 人知るらめや 大伴黒主 あなたのことを思い出して恋しい時には、初雁が鳴いて渡るように私も泣き続けていると、あなたは知っているだろ…
いにしへに なほたちかへる こころかな こひしきことに ものわすれせで いにしへに なほ立ち帰る 心かな 恋しきことに もの忘れせで 紀貫之 昔の思い出の日々にやはり立ち帰ってしまう心であるよ。恋しいという気持ちを忘れることもなく。 今は関係が壊れて…
わたつみと あれにしとこを いまさらに はらはばそでや あわとうきなむ わたつみと あれにし床を いまさらに 払はば袖や 泡と浮きなむ 伊勢 あなたが来てくれなくなって海のように荒れた床を、今更あなたがまた来るかのように袖で払って仕度をしても、払う袖…