2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧
わすられず こひしきものは はるのよの ゆめののこりを さむるなりけり 忘られず 恋しきものは 春の夜の 夢の残りを さむるなりけり 忘れられない、恋しいものは、春の夜の夢のような美しくも儚い時間が失われて、まさに夢のように消え去ってしまったことだ…
わびわたる わがみはつゆを おなじくは きみがかきねの くさにきえなむ わびわたる わが身は露を おなじくは 君が垣根の 草に消えなむ いつもわびしく暮らしているわが身は露のようなもの。できることなら露のように、あなたの家の垣根の草に置いて消えてし…
うつつには あふことかたし たまのをの よるはたえずも ゆめにみえなむ うつつには 逢ふことかたし 玉の緒の 夜は絶えずも 夢に見えなむ 現実にあのひとに逢うことは難しいから、夜はいつも夢に現れてほしい。 「玉の緒」は「絶ゆ」に掛かる枕詞。百人一首第…
しのぶれど こひしきときは あしひきの やまよりつきの いでてこそくれ しのぶれど 恋しきときは あしひきの 山より月の 出でてこそ来れ 思いは心に秘めていても、恋しさが募るときには、山から月が出るように家を出てあなたを訪れてしまうのです。 「あしひ…
わびひとは としにしられぬ あきなれば わがそでにしも しぐれふるらむ わび人は としに知られぬ 秋なれば わが袖にしも しぐれ降るらむ 悲嘆にくれる人にとっては、暦とは関係なく、常に季節は秋なのであろうか。だから私の袖はしぐれが降ったかのように涙…
はるがすみ やまほととぎす もみぢばを ゆきもおほくの としぞへにける 春霞 山時鳥 もみぢ葉を 雪もおほくの 年ぞへにける 春霞、山時鳥、紅葉の葉、そして雪と、春夏秋冬を巡るたくさんの年を過ごしてきたよ。 季節を巡るたくさんの年を過ごしてきたという…
はぎのはの いろつくあきを いたづらに あまたかぞへて すぐしつるかな 萩の葉の 色づく秋を いたずらに あまた数へて すぐしつるかな 萩の葉が色づく秋を何度も数えて、無駄に過ごしてきてしまったなあ。 萩の葉が色づくのは恋のきざし。そのきざしだけをい…
近隣なる人のときどきとかういふを、ほかにうつろふと聞きて ちかくても あはぬうつつに こよひより とほきゆめみむ われぞわびしき 近くても 逢はぬうつつに 今宵より 遠き夢見む われぞわびしき 近隣(ちかどなり)に住む愛しい人が「ときどきは逢いましょ…
いろもなき こころをひとに そめしより うつろはむとは おもはざりしを 色もなき 心を人に そめしより うつろはむとは 思はざりしを 色もない私の心をあの人の色に染めてからというもの、その色が褪せることがあろうとは思わなかったのに。 愛しい人の色にそ…
ふるゆきを ゆきとみなくに ひとしれず ものおもふときの かずまさりけり 降る雪を 雪と見なくに 人しれず もの思ふときの 数まさりけり 降る雪を雪とも見ないほどに人知れず物思いにふけるときには、雪とともに、物思いの数も増えていくのであるよ。 なかな…
おもひあまり こひしきときは やどかれて あくがれぬべき ここちこそすれ 思ひあまり 恋しきときは 宿離れて あくがれぬべき ここちこそすれ 思いあまるほどにあの人が恋しいときは、家を離れて身も心もどこかへ行ってしまいそうな心持ちがするよ。 第三句の…
あはれてふ ことををにして ぬくたまは あはでとしふる なみだなりけり あはれてふ ことを緒にして ぬく玉は あはで年ふる 涙なりけり 「あはれ」ということを緒にして貫き通す玉は、愛しい人に逢わずに長い年月を過ごしてきたがゆえの涙なのであるよ。 この…
さけばちる ものとおもひし くれなゐは なみだのかはの いろにざりける 咲けば散る ものと思ひし 紅は 涙の川の 色にざりける 咲けば散るものと思っていた紅花は、涙の川に落ちて、川を血の色に染めているのであるよ。 下二句は 599 とほぼ同一。「血涙を絞…
しづはたに みだれてぞおもふ こひしさは たてぬきにして おれるわがみか 倭文機に 乱れてぞ思ふ 恋しさは たてぬきにして 織れるわが身か あれこれと乱れて思うこの恋しさは、倭文のたてよこの糸で織りなした乱れ縞模様に私の身がなってしまったのだろうか。…
ひとめてふ ことはいかなる みちなれや いづちもゆかで はるけかるらむ 人めてふ ことはいかなる 道なれや いづちも行かで はるけかるらむ 人目というものはどのような道なのか。どこにも行かないのに愛しい人との間を遠く隔てるとは。 人目があるために逢瀬…
ゆめぢにも つゆぞおくらし よもすがら かよへるそでの ひちてかわかぬ 夢路にも 露ぞおくらし 夜もすがら 通へる袖の ひちてかわかぬ 夢の通い路にも露が置くらしい。夢で夜通し愛しい人のもとに通った私の衣の袖が濡れて乾かない。 初句「夢路にも」は、「…
すみのえの まつにはあらねど よとともに こころをきみに よせわたるかな すみのえの 松にはあらねど 世とともに 心を君に 寄せわたるかな 住吉の松ではないけれども、いつの世にもかわりなく、あなたに心を寄せ続けています。 「すみのえ(=住吉)」が松の…
はつかりの なきこそわたれ よのなかの ひとのこころの あきしうければ 初雁の なきこそわたれ 世の中の 人の心の あきし憂ければ 初雁が秋になると鳴きながら空を渡って行くように、私もずっと泣き続けている。愛しい人の心が私に飽きてしまったのがつらい…
きみにより ぬれてぞわたる からころも そではなみだの つまにざりける 君により ぬれてぞわたる 唐衣 袖は涙の つまにざりける あなたのためにずっと濡れ続けている衣の袖は、涙のつれあいのようなものであるよ。 第五句「つま」が「端」と「褄」の掛詞にな…
いろならば うつるばかりも そめてまし おもふこころを しるひとのなき 色ならば うつるばかりも そめてまし 思ふ心を 知る人のなき 私の心に色があるのならば人を染めてしまうものを、それも叶わず、あの人を思う私の心を知る人はない。 第五句は伝本によっ…
あめふれば いろさりやすき はなざくら うすきこころも わがおもはなくに 雨ふれば 色去りやすき 花桜 薄き心も わが思はなくに 雨が降ると、花桜は色を失って薄くなりやすいが、私の心はそのように軽薄なものではないのであるよ。 上三句が、次の「薄き」を…
よとともに ながれてぞふる なみだがは ふゆもこほらぬ みなわなりけり よとともに ながれてぞふる 涙川 冬もこほらぬ 水泡なりけり 私の人生とともに夜毎に流れる涙の川は、冬でも凍ることなくしぶきをあげて行くのであるよ。 「よ」に「世」と「夜」、「な…
きえやすき ゆきはしばしも とまらなむ うきことなげく われにかはりて 消えやすき 雪はしばしも とまらなむ 憂きこと歎く われにかはりて 本来消えやすい雪もしばしの間消えずにとどまってほしい。憂いを嘆いて消えてしまいそうな私の代わりに。 同時代の歌…
あきののの くさばもわけぬ わがそでの ものおもふなへに つゆけかるらむ 秋の野の 草葉もわけぬ わが袖の もの思ふなへに 露けかるらむ 秋の野原をぼんやりと、草葉をかき分けることもせずに歩きながら深い物思いに沈んでいる。そのせいで、自分の袖は涙で…
あきかぜに はぎのしたばの いろづけば ひとりぬるみぞ こひまさりける 秋風に 萩の下葉の 色づけば ひとり寝る身ぞ 恋ひまさりける 秋風が吹いて萩の下葉が色づくと、一人寝の身はいっそう恋しさがつのることよ。 「萩の下葉」は万葉集以来しばしば歌に詠ま…
ひとをおもふ こころのそらに あるときは わがころもでぞ つゆけかりける 人を思ふ 心の空に あるときは わが衣手ぞ 露けかりける 愛しい人を思い、心が上の空になっているときは、それが通じてしぐれている空と私の涙で、衣の袖が濡れることであるよ。 思い…
くれなゐに そでぞうつろふ こひしきや なみだのかはの いろにはあるらむ 紅に 袖ぞうつろふ 恋しきや 涙の川の 色にはあるらむ 袖が紅に染まる。恋しいがゆえの涙の川の色であろうか。 辛い涙は血の色をしているとされることをモチーフとした詠歌。544 やこ…
あまのがは みづたえせなむ かささぎの はしをししらず ただわたりなむ 天の川 水たえせなむ 鵲の 橋をし知らず ただ渡りなむ 天の川の水を絶やしてほしい。そうすれば鵲の橋とは関係なく、天の川を渡って愛しい人に逢いに行けるのに。 「鵲の橋」とは、七夕…
としをへて こひわたれども わがためは あまのかはらの なきぞわびしき 年をへて 恋わたれども わがためは 天の川原の なきぞわびしき 長年恋慕っているけれども、私には、七夕になれば逢うことのできる天の川原がどこにもないのがつらい。 556 と同じモチー…
おほぞらは くもらざりけり かみなづき しぐれごこちは われのみぞする 大空は くもらざりけり 神無月 しぐれごこちは われのみぞする 十月の大空は曇ってはいないのだけれど、私だけはしぐれ模様の心地がする。 この歌は、拾遺和歌集(巻第十一「恋一」 第6…