2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧
道行く人の初雁を聞く ことづても とふべきものを はつかりの きこゆるこゑは はるかなりけり ことづても とふべきものを 初雁の 聞こゆる声は はるかなりけり 道行く人が初雁の声を聞いている 今年初めて来訪した雁に、遠い場所からの言伝も聞きたいところ…
家に、女月を見る おもふこと ありとはなしに ひさかたの つきよとなれば いこそねられね 思ふこと ありとはなしに 久方の 月夜となれば いこそ寝られね 家で、女が月を見ている もの思いしているというわけではないが、月夜となるとその美しさになかなか寝…
秋の風、荻の葉を吹く いつもきく かぜをばきけど をぎのはの そよぐおとにぞ あきはきにける いつも聞く 風をば聞けど 荻の葉の そよぐ音にぞ 秋は来にける 秋の風が荻の葉に吹きかかっている いつも聞くのと同じ風の音であるけれども、荻の葉のそよぐ音に…
男女、舟に乗りて遊ぶ まちつけて もろともにこそ かへるさの なみよりさきに ひとのたつらむ 待ちつけて もろともにこそ かへるさの 波よりさきに 人の立つらむ 男女が、舟に乗って遊んでいる 待ち受けて一緒に帰ろうと思っているのに、あの人はどうして波…
男、山里に行くついでに、木のもとに時鳥を聞く ゆくさきは ありもあらずも ほととぎす なくここにてを ききてくらさむ 行くさきは ありもあらずも 時鳥 鳴くここにてを 聞きて暮らさむ 男が、山里に行く途中で、木の下で時鳥が鳴くのを聞いている 行く先の…
人の家に常夏あり かはるとき なきやどなれば はなといへど とこなつをのみ うゑてこそみれ かはるとき なき宿なれば 花といへど 常夏をのみ 植ゑてこそ見れ 人の家に常夏が植わっている いつも変わることのない家であるから、花といえば常夏だけを植えて眺…
くれぬとは おもふものから ふぢのはな さけるやどには はるぞひさしき 暮れぬとは 思ふものから 藤の花 咲ける宿には 春ぞ久しき 春はもう終わると思うのに、藤の花が咲いている家ではまだ長く続くように思えるよ。 255 では春の終わりが近いことを教えてく…
藤の花 ほととぎす なくべきときは ふぢのはな さけるをみれば ちかづきにけり 時鳥 鳴くべきときは 藤の花 咲けるを見れば 近づきにけり 藤の花 藤の花が咲いているのが見られたということは、時鳥が鳴く時期も近づいているのだなあ。 藤の花と時鳥も定番の…
道行き人 あはとみる みちだにあるを はるがすみ かすめるかたの はるかなるかな あはと見る 道だにあるを 春霞 かすめるかたの はるかなるかな 道を行く人 あれが道だと思うだけでも遠いのに、春霞に霞んだ彼方の何と遥かなことであろうか。 冒頭の「あは」…
海のほとりに風吹き波立つ ふくかぜに さきてはちれど うぐひすの こえぬはなみの はなにぞありける 吹く風に 咲ては散れど 鶯の こえぬは波の 花にぞありける 海のほとりに風が吹き、波が立っている 吹く風に咲いては散る花のようであるが、鶯が蹴散らすこ…
山里の桜を見る まだしらぬ ところまでかく きてみれば さくらばかりの はななかりけり まだ知らぬ ところまでかく きてみれば 桜ばかりの 花なかりけり 山里の桜を見る 見知らない山里までこのように来てみると、桜ほど良い花はないということがわかった。 …
古里にいたれり はなのいろは ちらぬまばかり ふるさとに つねにもまつぞ みどりなりける 花の色は 散らぬ間ばかり 古里に つねにも松ぞ 緑なりける 古里についた 花の色が美しいのは散らない間のわずかの期間だけであるが、古里の松はいつも緑であるよ。 こ…
女、柳を見る あをやぎの まゆにこもれる いとなれど はるのくるにや いろまさるらむ 青柳の 繭にこもれる 糸なれど 春のくるにや 色まさるらむ 女が柳を見ている 繭にこもっている青柳の糸ではあるけれど、春が来るからだんだんと色づいてきている。 第四句…
貫之集 第四 天慶二年四月、右大将殿御屏風の歌二十首 人の家に紅梅あり くれなゐに いろをばかへて むめのはな かぞことごとに にほはざりける 紅に 色をばかへて 梅の花 香ぞことごとに 匂はざりける 天慶二年(939年)四月、右大将殿の御屏風の歌二十首 …
まつがえに つるかとみゆる しらゆきは つもれるとしの しるしなりけり 松が枝に 鶴かと見ゆる 白雪は つもれる年の しるしなりけり 松の枝に、鶴かと思われるほどに積もった白雪は、長い年月のしるしなのですよ。 松と鶴と雪の組み合わせは 051、074、278 …
人の家に、女簾のもとに立ち出でて、雪の木に降りかかるれるを見る くさきにも はなさきにけり ふるゆきや はるたつさきに はなとなるらむ 草木にも 花咲きにけり 降る雪や 春立つさきに 花となるらむ 人の家で、女が簾のもとに立ち出て来て、雪が木に降りか…
臨時の祭 あしひきの やまあゐにすれる ころもをば かみにつかふる しるしとぞみる あしひきの 山藍に摺れる 衣をば 神に仕ふる しるしとぞ見る 臨時の祭 山藍で摺った衣を、神に仕えるしるしと思って見る。 「臨時の祭」は11月に行われる賀茂神社の祭事。臨…
人の家に、男女庭の菊見る うゑてみる きくといふきくは ちよまでに ひとのすぐべき しるしなりけり 植ゑてみる 菊といふ菊は 千代までに 人のすぐべき しるしなりけり 人の家で、男女が庭の菊を見ている 庭に植えて鑑賞する菊という菊はすべて、千代まで二…
人の家の簾のもとに女出でゐたるに、垣のもとに男立ちてものいひ入る。垣の面に薄おひたり いでてとふ ひとのなきかな はなすすき わればかりかと まねくなりけり 出でてとふ 人のなきかな 花薄 わればかりかと 招くなりけり 人の家の簾のもとに女が出てきて…
山里の家はべりけるに、水のうへに木の葉落ちて流る やまちかき ところならずは ゆくみづも もみぢせりとぞ おどろかれまし 山近き ところならずは 行く水も 紅葉せりとぞ おどろかれまし 山里の家にいたところ、水面に木の葉が落ちて流れていた 山里に近い…
馬、車に乗りて、人おほく野に出でたり。さまざまの花咲きまじりたり あきくれば はたおるむしの あるなへに からにしきにも みゆるのべかな 秋くれば 機織る虫の あるなへに 唐錦にも 見ゆる野辺かな 馬や車に乗って、たくさんの人が野に出ている。さまざま…
駒牽 みやこまで なつけてひくは をがさはら へみのみまきの こまにぞありける 都まで なつけてひくは 小笠原 逸見の御牧の 駒にぞありける 駒牽 駒牽で都まで馴らしてひいているのは、小笠原や逸見の牧場の馬であるよ 「小笠原」「逸見」はいずれも御料牧場…
七日ゆふべ 男あまたゐて、天の川原見たる おほぞらは ひもなけれども たなばたを おもひやりても ながめつるかな 大空は ひもなけれども たなばたを 思ひやりても ながめつるかな 七日の夜 男たちがおおぜいいて、天の川を見ている 暮れた空には日もなけれ…
道行く人馬に乗りて、鞭して月をさして見る てるつきを みざらましかば むばたまの よるはものべも ゆかずぞあらまし 照る月を 見ざらましかば むば玉の 夜はものべも 行かずぞあらまし 道行く人が馬に乗って、鞭で月の方を指し示して見ている 照る月を見な…
女どもの川のほとりに遊ぶ わがみまた あらじとおもへど みなそこに おぼつかなきは かげにやはあらぬ わが身また あらじと思へど 水底に おぼつかなきは 影にやはあらぬ 女たちが川のほとりで遊んでいる こんなみすぼらしいわが身はふたつとあるまいと思う…
人の家に桜の花おほかり ことさとも みなはるなれど わがやどの さくらにまさる はなやなからむ こと里も みな春なれど わが宿の 桜にまさる 花やなからむ 人の家にたくさんの桜の花が咲いている 他の里もどこも春であるけれど、私の家の桜にまさる花はない…
紅梅のもとに女どもおりて見る ゆきとのみ あやまたれつつ むめのはな くれなゐにさへ かよひけるかな 雪とのみ あやまたれつつ 梅の花 紅にさへ かよひけるかな 紅梅のもとに女たちが車から降りて見ている 雪かと見間違えるばかりに白く咲きながら、梅の花…
子の日 はるたちて ねのびになれば うちむれて いづれのひとか のべにこざらむ 春立ちて 子の日になれば うち群れて いづれの人か 野辺に来ざらむ 子の日 立春が来て子の日の日になると、おおぜいの人がやって来る。一体誰が野辺に来ない人がいるだろうか。 …
おなじ七年、右大臣殿屏風の歌 梅の花、若菜あるところ、女、簾の前に出でて見る のべみれば わかなつみけり むべしこそ かきねのくさも はるめきにけれ 野辺見れば 若菜摘みけり むべしこそ 垣根の草も 春めきにけれ 同じ承平七年、右大臣殿の屏風の歌 梅の…
あきはぎに みだるるたまは なくしかの こゑよりおつる なみだなりけり 秋萩に 乱るる玉は なく鹿の 声より落つる 涙なりけり 秋萩に乱れ落ちる露の玉は、鳴く鹿の声につれてこぼれ落ちる涙なのであるよ。 「なく」には「鳴く」と「泣く」が掛かっていて、萩…